依頼に当選しました。

「ただゆいいつのかぞくだから」

仲の良い姉と弟を引き離す。
それが今回のお仕事。

仲の良い姉弟。
両親はいるが、共働きで、さらに夫婦関係は冷え切っていて、家にいてもロクな会話もない。
そんな環境だから。
姉弟は互いが互いの支え。
心の拠り所。

その弟が死んだ。
だが、リビングデッドとして今も活きている。
姉はその事実を知らない。
「リビングデッド」という概念を知らないのだから。

私たちはその弟を消す。
仕事だから。

私のは家族がいない。
もちろん、木の股から生まれたわけではないから、私を生んだ人はいる。
だが、もう家族じゃない。
自分を捨てた人間を家族と思えるほど、私は人間が出来てはいない。

私は家族を知らない。
だから、この姉が理解できない。

リビングデッドというものを知らないとはいえ、弟が普通じゃないことは気づいているはずだ。
定期的に血を欲する人間など普通はいない。
指先を軽く切ってその血を吸わせているようだけど、口の中がひんやりと冷たい人間もいない。
普通じゃない。
わかっているはず。
弟は普通じゃない。

なのに、それに目をつむっている。
弟がいるからそれでいい。それが何であろうと、弟だからそれでいい。

理解できない思考。
家族というのは、そういうものなのだろうか。

私にはわからない。