何の特徴もなく、ただ地味な子供だった。
力に目覚めるまでは
体中を走り回る白燐蟲の感覚。
制御することもできず、幼い体は抗する手段も知らず。
ただ、体の中の蟲を追い出すべく、自らの体を切り刻みその血を啜っていた。
止めれば暴れ、周りを傷つける。
「蟲が暴れる」と妄言を吐く子供。
妄言ではなく真実だか、周りはそうは思わなかった。
そして皆坂柚流は、家族の判断によって精神病院に入れられた。
病院でも、彼女は手のかかる患者だった。
自傷行為はとどまることを知らず、彼女のベッドは常に血で汚れていた。
入院から3年。
彼女のもとに銀警学園から入学書類が届く。
次はどこに閉じ込められるのか。
不安を抱きやってきた学園で、彼女は初めて理解者に出会い、自分の体のことを知る。
ようやく彼女は人並みの生活を手に入れる。
しかし周囲に理解されることなく、蔑みと憐憫のまなざしを向けられ生きてきた半生の中で生まれた狂気は
消えることはなかった。