背「時に柚流は、ルークとセシリーはわかるかい?」
柚「どのルークとセシリーですか」
背「刀鍛冶の」
柚「まぁわかりますよ」
背「その二人が結婚をするという話でね。私は知人として式に参加してるわけですよ。
ところが私の立場がなかなか特殊でね?」
柚「どう特殊なんですか?」
背「ゾンビなの」
柚「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
背「ゾンビなんですよ。死んでるんですよ、私。しかもなりたてフレッシュ。キミらの世界で言うなら、死んだばっかだから理性も残ってるし、腐食も全くしていない地縛霊みたいな」
柚「・・・・・・・・。」
背「で、死んだ理由が、どうやら二人を身を呈して守ったかららしいのね。だからゾンビなのに周りのみんなから感謝されてるのよ。『君のおかげであの二人が結婚できるんだ』みたいに。
で、まぁ恙なく式が進んでいくんですよ。
ところが式の途中で私の体に異変が!」
柚「・・・どのような」
背「こう、胸のあたりに激痛が走ってですね、苦しくなるんですよ。こう、ゾンビとしての本能が理性を侵食しているような。
でもせっかくの式を台無しにするわけにもいかないから、必死で耐えるわけよ。耐えて耐えて、式が終りに近づいて、二人が教会から退場を始めるのね。
あ、式場ははこじんまりした教会でね。石畳でレンガ造りみたいなそんなイメージね。長椅子が並んでて。」
柚「で、二人が退場して式が終わるわけですか?貴方は最後まで耐えきったと?」
背「ところがそうは問屋がおろさないんだよこれが。」
柚「・・・・」
背「式が終わりかけて、私、ほっと一安心するわけですよ。耐え抜いた、と。
ところが、ほっと一安心したら、突然喉にナイフを突きたてられるんですよ」
柚「・・・・・・・・・・・・・・・・は?誰にやられるんですか」
背「式の参加者たち。
次から次へと四方八方からザクザクとナイフがね、のどにね?
しかも笑顔でね?」
柚「・・・・・・」
背「で、私は倒れるわけよ。ルークとセシリーはそれに気付かず教会を出ていくわけ。
しかもそれで終わるかと思いきやだね。」
柚「まだ何かあるんですか」
背「こう、教会ってさ、なんていうの?祭壇っていうかさ、神父さんがしゃべる教壇みたいなのあるでしょ?
アレの横の石畳が一枚外れてだね。穴がぽっかりと開くわけですよ」
柚「ははぁ・・・・。」
背「で、首から血をだらだら流しながら、そっちに引きずられていくわけ。
私は『冗談じゃない。こんな終わり方納得できるか』って思いながら抵抗するんだけど、まぁほら、喉やられてるから声は出ないよね、抵抗むなしく引きずられていくんですよ」
柚「で、穴に放り込まれると?」
背「穴に放り込まれる直前で目を覚ますんよ」
柚「最悪ですね」
背「でしょー?どう思うよこれ。ほら、夢診断とかあるじゃない?」
柚「まぁろくな結果にはならないと思いますよ?一度精神病院行ったらどうですか?」
背「いや、夢一つで精神病院ってひどくね?」
柚「そうですか?まぁどちらにしろろくな夢ではないですねぇ」
背「いや全くだよ。久々に覚えてる夢がそれだからなぁ。
もう一個見た気がするんだけどそっちは覚えてないんだよね」
柚「きっとそっちは幸せな夢ですよ」
背「・・・・・。」