鏡を見れば、体に縦横に走る傷痕。
もう、ずいぶんと古くなった、昔の私。
手の届くところならどこにでもある、蟲の名残。
左腕の包帯をほどけば、体中の古傷とは違う傷痕。
まだ、生々しく残る、今の私。
未だなくならぬ、蟲の名残。
傷痕。
私の一部、私のすべて。
私とて、一人の女。
体に残る傷跡を、快く思ってはいない。
けれど、否定するつもりもない。
もしもこの傷痕を、一つ残らず消す方法があったとしても。
私は消しはしないだろう。
傷痕。
私の一部、私のすべて。
それを消すことは、私自身を否定すること。
私の過去を否定すること。
過去も、今も、未来も。
全て一つの私。
否定することは存在を否定すること。
私は否定しない。
自分自身を。
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